それは凶器からお守りに変わったんだ。
実の子に刺されました。なんて。お前に言える?
会社はきっとお前の管理能力を疑うよ。
きっと働けなくなるよ。そのままクビになるよ。
お前はどうするの? ねぇ。
父親を見ると。まずあの日の言葉が思い浮ぶ。
父親もあの日のことを覚えているはずなのに。
兄の様子を見に来る父親はすごく優しくて。
オレにも普通に。当然のように話しかけてきて。
すごくバカらしくて。イライラする。
「このナイフはお守りだから」
悠からお守りだと言われ、不思議なナイフを貰った。
何も切れないような。地味なアンティークナイフ。
変わりに悠が俺のナイフを預かって。
そのあと姉が。小さなナイフを。たくさんくれた。
俺は小さなナイフを気に入って。睦月にもやった。
睦月は。そのナイフを人に使ったら。絶交と言った。
ナイフというもの。
今もまだ。俺がナイフを持ち歩くのは。
悠がお守りだと言ったからだろう。
悠がくれたナイフは持ち歩くには大きくて。
切れないくせに捕まってしまうから。
だから。それは。屋根裏にしまってある。
変わりに小さなナイフを持ち歩いている。
きっと「普通」の人から見たら、
本当にありえないし気味が悪いだろうけど。
なんとなく。今も持ち歩いている。
持ち歩いても別に刺さなければいいんだよ。
そんなことを悠は言っていた。
ナイフじゃなくても人は簡単に殺せるんだから。
そういや悠は今ごろ海に飛び込んだんだよな。
梅雨になって。海が荒れた日。
そんな日に。一人であの海に行ったんだよな。
ねぇ。悠がくれたナイフはお守りだったのかな。
何を守ってくれたんだろう。
睦月は。悠がくれた姉妹ナイフで死んだんだよ。
睦月は守られたのかな。何を守ったんだろう。
俺たちの死は。終わらせる為じゃないんだよね。
そんなものじゃ。なかった筈だったよね。
ごめん。今年はお参りに行けないよ。
一人で君のところになんか。行けないよ。
去年は睦月と一緒だったから行けたけど。
今年はもう。一人だしさ。
すっげーダサいこと。口走っちゃいそうだ。
また三人でスイカ食べたかった。
花火でスイカ吹っ飛ばしてさ。
スイカ割って。遊びたかった。
まだやりたいこと。
たくさんあったんだけどな。
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