metempsychosis

2 0 0 7. 0 6 / 2 3  切り裂いたお守り。





それは凶器からお守りに変わったんだ。














実の子に刺されました。なんて。お前に言える?

会社はきっとお前の管理能力を疑うよ。

きっと働けなくなるよ。そのままクビになるよ。

お前はどうするの? ねぇ。













父親を見ると。まずあの日の言葉が思い浮ぶ。

父親もあの日のことを覚えているはずなのに。

兄の様子を見に来る父親はすごく優しくて。

オレにも普通に。当然のように話しかけてきて。

すごくバカらしくて。イライラする。

















「このナイフはお守りだから」

悠からお守りだと言われ、不思議なナイフを貰った。

何も切れないような。地味なアンティークナイフ。

変わりに悠が俺のナイフを預かって。

そのあと姉が。小さなナイフを。たくさんくれた。

俺は小さなナイフを気に入って。睦月にもやった。

睦月は。そのナイフを人に使ったら。絶交と言った。

















ナイフというもの。

今もまだ。俺がナイフを持ち歩くのは。

悠がお守りだと言ったからだろう。

悠がくれたナイフは持ち歩くには大きくて。

切れないくせに捕まってしまうから。

だから。それは。屋根裏にしまってある。

変わりに小さなナイフを持ち歩いている。

きっと「普通」の人から見たら、

本当にありえないし気味が悪いだろうけど。

なんとなく。今も持ち歩いている。

持ち歩いても別に刺さなければいいんだよ。

そんなことを悠は言っていた。

ナイフじゃなくても人は簡単に殺せるんだから。

















そういや悠は今ごろ海に飛び込んだんだよな。

梅雨になって。海が荒れた日。

そんな日に。一人であの海に行ったんだよな。
















ねぇ。悠がくれたナイフはお守りだったのかな。

何を守ってくれたんだろう。

睦月は。悠がくれた姉妹ナイフで死んだんだよ。

睦月は守られたのかな。何を守ったんだろう。

俺たちの死は。終わらせる為じゃないんだよね。

そんなものじゃ。なかった筈だったよね。















ごめん。今年はお参りに行けないよ。

一人で君のところになんか。行けないよ。

去年は睦月と一緒だったから行けたけど。

今年はもう。一人だしさ。

すっげーダサいこと。口走っちゃいそうだ。




















また三人でスイカ食べたかった。

花火でスイカ吹っ飛ばしてさ。

スイカ割って。遊びたかった。

まだやりたいこと。

たくさんあったんだけどな。

此岸屋梁落月彼岸