君はまるで恐れを知らぬ狼ようで。
配属されてきた人が課長に怒鳴られていた。
「もうやめてしまえ」と。
それを聞いたその人は。
課長を罵りながら仕事を辞めた。
怒鳴られた人はダラけていた。
よく遅刻もしたし仕事も適当だった。
だから今回辞めさせられたのは、
まぁ当然だったと思う。
なのに彼は辞める間際にも悪態を吐いて、
自分はまったく悪くないと言っていた。
小さいことばかりうるさくて最低だと。
その言葉を聞いたときオレは、
何故だかすごいと、そう思った。
オレは遅刻をしないよう心がけている。
それは社会人としての当然の行為と言うより、
どこか強迫観念のような、そんな感じ。
遅刻で評価を下げられるのが嫌だから。
遅刻で迷惑を掛けるのが嫌だから、
遅刻なんかでクビになるのも嫌だから。
だからそんな理由から遅刻をしないようにと。
まるで人からの評価に怯えるように。
いつも時間を守っている。
それに比べあの人はあっさり遅刻した。
人の評価なんて気にも留めていなかった。
そして辞める間際までオレは悪くないと。
そんなことを言ってのけた。
きっとあの人の中には「自分」しかいなくて、
どんなことでも己を正当化できるのだと思う。
人に嫌われるのも恐れないほどの「自分」。
それはある意味、別の強さだとオレは思った。
人の評価を気にすることもない、強い人間だと。
そんなことを職場の兄さんに言うと笑われた。
そんな強さならオレはいらないな。
会社辞めさせられたら元も子もないし。
そういえばそうですよね。
オレはその場では納得したフリをしたけど
それでもどこか納得できずにいた。
あんな人間は確かに「社会」ではお荷物だけど。
他人の評価など気にせず生きてけるあの人は、
「人」としては完璧なんじゃないか。
そんなことを思えたから。
他の人はどう思うんだろう。
人の評価を気にしながら一生を過ごすのと。
たとえ人に必要とされなくても、
人の評価など気にせず一生を過ごせるのは。
いったいどっちが幸せだと思うのだろう。
それはまるで狼のよう。
一人で孤独に生きてゆく。
強い狼。
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