満たされると不安だなんて。
何て皮肉なイキモノなのだろう。
仕事帰りに占いをしてもらった。
雑誌に載っていたよく当たる占い師。
ウソだウソだと職場で騒がれてて、
じゃあ行ってみようと、そんな話になり。
話のネタとして。職場の人と一緒に。
占いは兄さんから先にしてもらった。
兄さんは恋愛のことを占ってもらい。
それについて色々と話す占い師を見て。
(なんか曖昧な台詞だな。)
(どーとでもとれるじゃないか。)
俺はそんなあら探しばかりをしていた。
初めから信じようとは思っていなかった。
そして兄さんの占いが終わり、
「ヤバイ、オレ素敵な人間だって。当たってるかも」
そうやって笑う姿を見て。
「兄さんは素敵なんかじゃないですよ。」
俺も茶化しながら笑ってた。
俺は教育実習のことを訊き。上手くいくといわれた。
そのようにしてれば上手くいく。と。
それを訊いて俺は喜んだフリをした。そして。
(俺の振る舞いにすら気づいてないじゃないか。)
注意点などを訊きながらそんなことばかり考えていた。
兄さんが、よかったな。そう笑ってくれた。
俺も、よかったと。そう喜んだフリをした。
「ありがとうございました。」
そう言ってその場を去ろうとした時。
ふと、言われた。
「あなたが本当に訊きたかったのは違うよね?」
「今あなたの心には穴が開いている。」
「このまま行くとその穴に深く迷い込む。」
顔が強張ったと思う。俺はビックリして訊いた。
「は?なんですかそれ。」
それ以上語られないように。低い声をだした。
素で、慌てて、遮るように聞き返した。
「迷い込んでもあきらめなければ、大丈夫だから」
軽く、とても軽く、あいつはそんなことを言っていた。
「今あなたの心には穴が開いている。」
その言葉を訊いたとき。ズクリと。疼いた。
心と形容するのは可笑しいけど。
確かにそこが、震えるように。疼いた。
言い当てられたのか、はたまた俺の解釈か。
そんなものはわからないけど。
睦月たちのことを知られてるような気がして。
とても気味が悪いと、心底思った。
占いが終わって外に出ると雨が降っていた。
それまでもパラパラと降っていたけど。
なにか違う雨のように見えて。変だった。
俺も結構、宗教とかはまりやすいのかもしれない。
「あいつ怖ぇーよ。心の穴って何さ?!」
そう誤魔化しながら笑って、叫んだ。
「気にするなって。」
「きっとマルコビッチの穴みたいなもんだよ」
兄さんは笑いながら、映画の話をしてくれた。
あの最後の言葉を訊いたとき、オレは鳥肌が立った。
どこか、囁かれたかのように、甘い言葉だった。
とても変で、気味が悪いんだけど。魅力的な言葉。
兄さんがいなかったらまだ、あの言葉を聞いてたと思う。
そして最後まで聞いて、しまいには気が狂ったと思う。
なんでか解らないけど。なんとなく、そんな気がする。
もう。どうにもならないところまで来てるのに。
本当に俺のことがわかるのなら。笑って殺してくれよ。
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