metempsychosis

2 0 0 7. 0 8 / 1 0 甘く優しく盲目的で。






意味のある会話を避け。意味の無い笑みを浮かべ。













「うん大丈夫だよ」

ホンキで言えたと思ってた。

「うん大丈夫」

それは俺にとっては自虐的で。

自己愛的な言葉だった。

「うん大丈夫」

そう笑えた時、暗い満足感を覚えた。

「うん。大丈夫。」

















広島の友人がブトに刺された。

痒いし痛いし。もうダメだ。

そんなことを電話で言ってきた。

オレは笑って彼を思い出す。

いかついくせに泣き言かよ。

この口から出て来たのは。

昔と変わらない言葉で。

じゃけぇ大きさは違いや。

彼は笑いながら同じこと。

昔と変わらないことを言う。




















彼はオレの伯父さんの。友達の。息子。

一目見たとき彼はごつくて。正直ビビった。

だけどそれ以上に優しくて。暖かかった。

そういや夜の散歩をする俺に付いて来て。

川原で一緒に話したときなんかさ。

二人ともブトに刺されて苦しんだっけ。

腕とかすっげー腫れて動かないし。

お前のせいだって、恨めしく言われたっけ。

確かにアレは痛いし痒いし。ひどいよな。

なんか懐かしいな。ずっと。忘れてた。



















もしも今君に逢ったとして。

君は顔を顰めずにいるだろうか。

前みたいに遊べるだろうか。

職場でも家でもギリギリだよ。

不満は無いはずなのに。

ギリギリ痛むんだ。

君達までギリギリになったら。

それだけが。気がかりなんだ。
















でもそうだな。夜中に。

ぼーっとさ。月を見たいな。

散歩しながら。

すっげーだるだる話したい。

静かで暗い道を歩きながら、

座ったり。ぼーっとしたいな。

ブトに刺されてもいいだろ?

星とかきれいだったろ?

ぼーっと過ごす無意味な時間。

オレはあれが好きだったよ。


















一緒に散歩しようって。

君も覚えててくれたのは。

とても嬉しかった。


















「うん。大丈夫。」

同じことを。繰り返す。

壊れた玩具のように。

いつまでも。いつまでも。

此岸屋梁落月彼岸