意味のある会話を避け。意味の無い笑みを浮かべ。
「うん大丈夫だよ」
ホンキで言えたと思ってた。
「うん大丈夫」
それは俺にとっては自虐的で。
自己愛的な言葉だった。
「うん大丈夫」
そう笑えた時、暗い満足感を覚えた。
「うん。大丈夫。」
広島の友人がブトに刺された。
痒いし痛いし。もうダメだ。
そんなことを電話で言ってきた。
オレは笑って彼を思い出す。
いかついくせに泣き言かよ。
この口から出て来たのは。
昔と変わらない言葉で。
じゃけぇ大きさは違いや。
彼は笑いながら同じこと。
昔と変わらないことを言う。
彼はオレの伯父さんの。友達の。息子。
一目見たとき彼はごつくて。正直ビビった。
だけどそれ以上に優しくて。暖かかった。
そういや夜の散歩をする俺に付いて来て。
川原で一緒に話したときなんかさ。
二人ともブトに刺されて苦しんだっけ。
腕とかすっげー腫れて動かないし。
お前のせいだって、恨めしく言われたっけ。
確かにアレは痛いし痒いし。ひどいよな。
なんか懐かしいな。ずっと。忘れてた。
もしも今君に逢ったとして。
君は顔を顰めずにいるだろうか。
前みたいに遊べるだろうか。
職場でも家でもギリギリだよ。
不満は無いはずなのに。
ギリギリ痛むんだ。
君達までギリギリになったら。
それだけが。気がかりなんだ。
でもそうだな。夜中に。
ぼーっとさ。月を見たいな。
散歩しながら。
すっげーだるだる話したい。
静かで暗い道を歩きながら、
座ったり。ぼーっとしたいな。
ブトに刺されてもいいだろ?
星とかきれいだったろ?
ぼーっと過ごす無意味な時間。
オレはあれが好きだったよ。
一緒に散歩しようって。
君も覚えててくれたのは。
とても嬉しかった。
「うん。大丈夫。」
同じことを。繰り返す。
壊れた玩具のように。
いつまでも。いつまでも。
|